【米・炭疽菌事件】
炭疽菌とは?
コッホが発見、姿を変えて生き延びる
米国で郵便物などによって送られた炭疽(たんそ)菌の被害が広がり、細菌がテロの凶器になるという恐れが現実になりつつある。同時多発テロとの関連も疑われている。
「細菌研究の歴史は炭疽菌から始まった」と、帯広畜産大の牧野壮一・助教授は話す。
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| 炭疽菌の感染経路 |
1876年。ドイツのコッホが羊から炭疽菌を分離したと発表。初めて微生物が伝染病の原因になることを解明した。5年後、ワクチンをつくったのがフランスのパスツールだ。感染して死んだ家畜の死体が黒ずむので「炭疽」と呼ばれた。
炭疽菌は、桿(かん)菌と呼ばれる棒状の細菌で、納豆菌も仲間。大きさは0.003〜0.01ミリほど。ふだんは土の中で生きている。
環境が変わると姿を変える。栄養が悪かったり大気に触れたりすると殻に包まれた芽胞(がほう)状態になる。やはり生物兵器にと考えられるボツリヌス菌も同じ性質をもつ。
この状態は乾燥や熱、消毒薬などに強い。乾かして粉末にすれば瓶などに詰めて簡単に持ち運ぶことができる。
動物の体では腸に入ると、殻が取れて納豆のねばねばのような膜に包まれ、毒素を出す。
日本では近年はほとんど報告されていない。トルコからパキスタンにかけては「炭疽ベルト」とされ、年間数百人が発病すると見られている。
人への感染経路を=図=に示す。感染した家畜の肉を食べると腸で腸炭疽(致死率25〜60%)が起き、家畜をさばく時や菌のいる土に触れると皮膚の傷口から入って皮膚炭疽(同20%)になる。吸い込むと肺炭疽(同ほぼ100%)に。菌1万個で発病の恐れが出る。
テロでは芽胞の粉末をまいて吸い込ませるという手口が考えられる。
米戦略国際問題研究所は、ミサイルで炭疽菌30キロをばらまくと、10平方キロにいる3万〜10万人が死亡すると試算する。
培養は細菌学を学んだ大学生もできるが、芽胞を乾燥させて肺に入り込みやすい大きさ(0.001〜0.005ミリ)にするには技術が要る。
日本医師会はホームページで医師向けに米国の治療法の紹介を始めた。皮膚炭疽は虫さされのような発しんが起き、潰瘍(かいよう)に変わる。初期に2カ月ほどペニシリンなどをたくさん使う。
肺炭疽はインフルエンザの症状に似ている。軽い発熱や疲労感が数日続き、頭痛や筋肉痛などが起こる。呼吸が困難になることも。腸炭疽とともに抗生物質で治療する。
粉末が入った不審な郵便物が送られるなど、心配なことがあれば、家庭用の漂白剤を水で10倍ほどに薄めて洗えば殺菌できるという。
(10/19)
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