【米・炭そ菌事件】
バイオテロ 日本の対策
米国で起きた炭そ菌の連続感染。「バイオテロ」の影もちらつく。日本も動き出した。(科学部)
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| 生物化学兵器を使ったテロ事件を想定した訓練を行う警視庁NBCテロ捜査隊員たち=10日、東京都江東区で |
「1人の感染でも珍しいのに3人目ですからね。うちは米軍基地も抱えている。警戒せざるを得ない」。米フロリダ州の炭そ菌感染が「事件」になった11日、神奈川県衛生総務室の菅沼敏文・企画担当課長は「未知の対応」に追われた。
これまで感染症は診断確定後に医師から報告を受けていた。だが、炭そ菌などがまかれた場合、これでは間に合わない。もっと早く「症状が疑わしい段階」でつかめないか。医師会などに協力を求めることを検討中だ。
横浜市の高秀秀信市長は万一、発生した場合、生物化学兵器などへの対応は自治体でやるべき仕事だとして薬剤の備蓄などを指示した。米軍基地を抱える青森県三沢市でも11日、警察、自衛隊、JR、電力会社に集まってもらい、テロに備えた対策会議を開いた。担当者は「上下水道の安全対策も含め、様々な可能性を想定して対応したい」。
厚労省、経済産業省、防衛庁、警察庁。先週末から、省庁は相次いで備えの強化に動いた。内閣府は17日、生物化学テロに関する専門家や関係各省の担当者らを集めて、急きょ会合を開く予定だ。
だが、99年7月、日米防衛首脳会議でコーエン米国防長官(当時)は、すでに脅威に備えるよう日本側に警告していた。
昨年、防衛庁は感染症、危機管理の専門家ら9人を集めた懇談会を発足。メンバーは同年9月、米陸軍感染症研究所などアメリカの5施設を訪ねた。
米連邦捜査局(FBI)や米疾病対策センターなどが緊密な連携体制をつくり上げていた。4200万人分の天然痘ワクチンの備蓄も始まっていた。
防衛庁は今年度予算にテロ対策などに約28億円を計上し、「米国派遣などで人材育成を急ぐ」としている。厚労省は炭そ菌など数十種類の微生物や化学ガスについて、各地の研究機関がどこまで検査や対応ができるのかを洗い出し、今春、報告書をまとめた。
95年に地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教(アレフに改称)は、炭そ菌やボツリヌス菌をまく計画も立てていた。
首都で惨劇が起こってから6年。防衛庁の懇談会は4月にまとめた報告書で、こう指摘した。「現在の防衛庁、自衛隊では生物兵器対処に係る人的資源、情報、設備等の基盤は乏しく、十分な体制を構築するまでにはかなりの時間を必要とする」
懇談会メンバーだった志方俊之・帝京大教授は語る。「いまの日本で発生したら、お手上げだ。バイオテロは心理的なパニックも起こりやすい。サリン事件の教訓から、もっと対応を進めておくべきだった」
(10/12)
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