「綿々と続く」保守票 「50議席台前半」。今週前半、自民党が実施した最終の独自世論調査の結果はこう出た。 新聞各紙が「改選51議席は微妙」といった参院選情勢を報道した直後の調査。小泉首相らが目標とした改選議席数(欠員の鹿児島選挙区を含む)を何とかクリアする結果だったが、調査が前提とする投票率は「50%程度」。自民党本部の関係者の不安は消えない。「投票率がそれより上昇すれば大敗の可能性もある」 自民、民主の「二大政党」の決戦の行方はまだ読めない。しかも両党の間の垣根が低まった「似た者同士」の争いになっているのだから。 □ □ 「小泉ブーム」で大勝した前回01年参院選でさえ、自民党が議席を獲得できなかった1人区が二つある。 三重と岩手。民主党の岡田代表と小沢一郎前代表代行の地元だ。「この二つで勝てば、民主には打撃だ」。自民党は序盤から幹部クラスを連日のように送り込んだ。 9日。首相は、6月26日の鈴鹿市に続いて三重入りし、JR桑名駅前に立った。「残り2年間で改革の芽を本物にするのが小泉内閣の使命」。桑名市を選んだのは首相本人という。党県連幹部の解説だ。「県連は人口の最も多い四日市市を望んだが、桑名は岡田氏が最も強い地盤。首相はあえてそこを狙った」 一方、岡田氏。地元入りは計3回。これまで岡田氏本人の選挙以外はほとんど表に出ない多津子夫人が現れ、「岡田になり代わって戦います」と頭を下げることも多い。 ただ、この地で自民と民主の「境界線」は極めて薄い。岡田氏が代表就任後初めて里帰りした5月30日。真っ先に向かった先は、旧田中派の元衆院議員で旧三重1区選出の山本幸雄元自治相(93)だった。岡田氏は小沢氏同様、旧田中派の流れをくむ保守本流の旧竹下派出身。岡田氏は、山本氏から地盤を譲り受ける形で90年に自民党公認で初当選した。 昨年の総選挙での岡田氏の三重3区での得票は約13万2千票。民主党の比例区票を約4万票も上回った。党県連幹部は「山本さんから受け継いだ保守票だ。『民主党は嫌いだが、岡田さんには投票する』という票が綿々と続いている」 一方、自民党公認の元県議も山本氏の後援会員を引き継ぐ。自民と民主の基盤が入り乱れる「まだら模様」なのだ。 候補者選びも同じ。三重県選出の自民党国会議員らが今回の民主党公認候補と接触していた時期がある。「あんたも元々保守だったんだから」。01年参院選と昨年の総選挙で自民党が担ごうとしたのは、日本青年会議所(JC)の役員を経験したこの民主党候補だった。 生き残りへ同質化批判 自民党離党後に「小沢王国」となった岩手では異変が起きた。小沢氏の地元後援会員の一部が、小沢氏の推す民主党候補でなく、自民党推薦の元副知事を支援する。 「県の公共事業が大幅に削減される中、業界との窓口になってくれた。世話になったので、今回だけは相手候補をやらせてもらう」。小沢後援会に属する水沢市の建設業者は言う。 小沢氏は10日、公示後初めて岩手入りする。昨年の総選挙で「民主党の応援団長」を自称した田中康夫・長野県知事とともに盛岡市内のスーパー前に立つ。無党派層の多い盛岡市が選挙戦のカギを握るとみるからだ。 □ □ 同質化する二大政党のはざまで、生き残りをかける政党もある。三重選挙区の共産党公認候補の陣営は「自民と民主は悪政を競い合っている。年金の給付財源ひとつとっても、国民の右のポケットから取るか左のポケットからかの違いしかない」と、自民、民主両党を批判する。 社民党の福島党首も9日の宮崎市での記者会見で「経済政策と平和政策で、自民と民主は似ている。勝ち組のための社会をつくろうとして、地方は切り捨てられる。これでは宮崎は生きていけない」。 そして、公明党。最終盤で、14選挙区で自民党から緊急の支援要請を受け、三重を含む4選挙区を除き、岩手など10選挙区での支援を約した。創価学会幹部の動きもあわただしい。 「滋賀は何とか当選が見えてきた」「長崎と宮崎は互角の戦いだ」……。西日本の幹部が電話で情報を交換した。 ただ、比例区での「1000万票獲得」の目標もある。「投票率が伸びないとうちの比例区の得票も伸びないが、高投票率だと民主党が勝つかも知れないし……痛しかゆしだ」。公明党幹部は、微妙な票の割り振りと行方に悩む。=おわり
(朝日新聞2004年7月10日朝刊紙面)
◇ 参院選の11日の投開票まであとわずか。決戦前夜の最前線をシリーズで追う。
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