2004参院選

下:存在感 改革求め地方から声


 滋賀県の国松善次知事(66)は5月13日、東京・平河町の都道府県会館で、知事と学者による研究会「地域自立戦略会議」に出席した。会場には国松知事も含め5人の知事がいた。

 議論のテーマは道州制。しかし、知事たちの口をついて出るのは、小泉首相の音頭で始まった三位一体改革への不満だった。国松知事は国と地方の関係を見直す必要性を訴えるなかで、こう提案した。「参議院に、地域の経営を預かる責任者がメンバーに加わるような仕組みを考えたらいい」

 知事が参院議員を兼務するという思い切った構想だった。

 他の知事からは「大賛成」(梶原拓・岐阜県知事)、「それくらい大胆な制度の議論が必要」(増田寛也・岩手県知事)という声が上がった。

 98年に初当選して6年、国松知事は財政再建に追われてきた。一般会計の予算規模約5500億円の滋賀県で、借金である県債の03年度末残高は8555億円。10年で3倍以上に膨らんだ。そこに地方交付税のカット、国からの補助金の削減が追い打ちをかけた。

 「地方の実情を知る者が国で直接モノを言えばいい」。選挙区と任期以外には衆院と大した違いはなく、存在感の薄い参院を大きく変えるきっかけにもなる、と考えた。

 知事の参院議員兼務は、憲法の改正が必要になるが、国松知事は「地域経営の責任者が、チェック機関である参院に入ることで特徴が出る。衆院との違いを制度的に明確にしないとダメだ」と言った。

 15日午後2時、群馬県太田市役所の秘書室に置かれたファクスが動き始めた。環境省に求めていた地球温暖化防止事業のモデル自治体に選ばれたことが書かれていた。

 清水聖義市長は「気にかけてくれている。ありがたいことだ」と思った。送り主は、国への働きかけを頼んでいた群馬選挙区の現職参院議員だった。

 参院議員に求めるのは「国とのパイプ役」だ。自分の1票も「市の応援団」に入れるつもりだ。

 しかし、経験上、政府や党の要職にでも就いていない限り、参院議員は衆院議員よりも国への影響力が小さいと感じる。

 「顔ぶれも、衆院議員の子どもやスポーツ選手、タレント。衆院との違いが出せない参院なら、いらないのでは」。そんな思いにかられる。

 田中康夫知事とダム問題で対立し、長野県議を1期で辞めた浜康幸さん(53)に、今回の参院選で立候補の打診があった。しかし、浜さんは「立候補する大義名分がない」と断った。

 浜氏からみた地方の政党政治のピラミッドは、小選挙区選出の衆院議員を頂点に、県議、市町村議と連なっている。その中に、参院議員のポジションはない。

 参院議員の影が薄いのは、日頃のつき合いがほとんどないからだ。衆院と違って全県1区の参院は、選挙のとき以外、秘書も含めてほとんど顔を合わせない。農道の改良など地元の頼み事を受けるのは衆院議員だった。

 「選挙区選出の参院議員が本当の意味の地域代表になるには、選挙区が広すぎる。衆院のチェック役に徹するぐらいの改革が必要だが、そのためには、議員の意思が縛られてしまう政党の枠組みは邪魔だ」と思っている。

(朝日新聞2004年6月28日朝刊紙面)


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