年金・イラクの2大争点 議論、有権者に届いたか11日投開票の参院選は最終盤まで年金とイラクの2大争点を軸に展開した。各党党首も、国民生活と安全保障の両面で日本の将来を左右するこれらの問題に、訴えの多くを割いた。しかし、選挙戦術を重視するあまり、問題の本質論よりも手続き論に、自党の主張よりも他党の批判に重点を置く側面も目立つ。与野党のどちらの議論が、より説得力を持って有権者に届いたか。17日間の選挙戦を振り返ってみた。 ●改革の意義を強調 与党年金を含む社会保障制度について、小泉首相(自民党総裁)は「年金の一元化にはみんな賛成。与野党の立場を超え、長続きする制度をつくる」と繰り返し強調した。採決を強行した年金制度改革関連法や厚生年金問題での首相自身の「人生いろいろ」発言が不評なのを意識して、逆風を和らげる戦術だ。 終盤の6日には民間からの社会保険庁長官起用を発表。「厚労省の天下りポストに初の民間人」とアピールしたが、財源論議では、自身の任期中の消費税率アップを否定し続け、年金一元化への道筋や納税者番号制度などでもあいまいな説明に終始した。 自衛隊の多国籍軍参加問題では、ブッシュ米大統領に真っ先に参加を表明したことを、「いちいち国会に相談しなきゃ判断できない首相ならいらない」と弁明した。最終日の10日の大阪、東京での演説では2大争点には触れず、経済成長率や失業率など上向きの経済指標を並べて、「改革の継続」に訴えを絞った。 連立を組む公明党は自ら主導した年金改革が、皮肉なことに「逆風の最大要因」(幹部)となった。採決強行に加えて、出生率発表問題などで野党から「情報隠し」と攻撃され、「今後100年間崩れない年金の仕組みをつくった」(神崎代表)と、改革の意義の弁明に必死だった。年金改革をめぐる3党合意や自衛隊の多国籍軍参加に対する民主党の対応を「猫の目のようにくるくる変わる」「これでは国際社会から信用されない」と攻撃した。 ●対応の違い際立つ 野党民主党は政権担当能力を示すため、マニフェスト(政権公約)に年金目的消費税を盛り込み、「国民に耳の痛い政策もあえて申し上げた」(岡田代表)という。ただ、参院選が小泉政権の信任選挙となったこともあり、岡田氏は「(年金法案は)中身もひどいがやり方もひどい」と、採決強行やデータ隠しの追及に大半の時間を費やした。 ただ岡田氏は自らが署名した3党合意への対応をめぐって、与党から批判を浴びた。岡田氏は「国民年金まで含めた一元化をやるのか。消費税をどうするのか。首相は明確に答えることが議論の前提だ」と反撃したが、自党の政策については具体論に踏み込めなかった。自衛隊の多国籍軍参加でも、自衛隊撤退後に民主党としてイラク復興にどのように取り組むか、という点は不明確だった。 共産、社民両党は、年金改革関連法の白紙撤回とイラクからの自衛隊撤退の主張は民主党と同じだが、政権批判票が民主党に流れる傾向が分かり、終盤は民主党批判にも力を入れた。 共産党は、民主党が年金目的消費税を掲げていることから「年金で自公は保険料を上げ、民主は消費税を上げる。それだけの違いだ」(志位委員長)。社民党の福島党首は「民主党は有事立法に賛成。憲法改正も条件付きで賛成。民主党では平和は守れない」と主張。選挙協力と論戦で共同戦線を張る与党に比べ、野党陣営はバラバラな対応が際立つ結果となった。
■年金とイラク、党首はこう訴えた■
(朝日新聞2004年7月11日朝刊紙面)
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