下:与党の「実績」どう審判埼玉県の上田清司知事には、外出の際、必ずカバンに入れて持ち出す書類がある。 マニフェストの「進行度チェック表」だ。 昨年8月の知事選で自民党県連の推薦候補ら7人を破り当選した。そのときの武器が、実施する政策を期限つきで示したマニフェスト。知事の給与2割カットなど「すぐやる」7項目には、すでに○がついた。まだ他の項目には空白がある。 昨秋の総選挙での「マニフェストブーム」の火付け役となった改革派知事たちが、自己検証に取り組み始めた。今秋には全国の首長らが集まり、評価方法を検討する。上田氏は評価を加えてこそ、マニフェストを媒介とした政治と有権者の「輪」がつながると考える。 □ ■ 「これでいい。参院選は『実績』で行こう」 5月27日、首相官邸。小泉首相は自民党の額賀福志郎政調会長から参院選の公約パンフレットを受け取り、満足そうに眺めた。注文はなかった。 昨秋の自民党総裁選では、総裁選公約を「党内の反対派をあぶり出す踏み絵にする」と意気込んだ。その姿からは様変わりしたように見える。 何をするかより、何をしてきたか――。参院選について首相は16日、記者団に「いままでの実績をいかに評価していただくかだ」と語った。 総選挙から半年余り。今回の参院選は与党が掲げたマニフェストがどこまで実行されたかを評価する最初の機会だ。自民党も「郵政事業改革」など130項目のうち93%が具体化に向けて動き始めたと強調する。 だが、経済同友会の北城恪太郎代表幹事は「自民党のマニフェストはあいまいな点が多い」と辛口だ。5月に発表した評価で「表記の充実度」に5段階中の2をつけた。 年金は「04年に抜本改革を実施」だけ。イラクへの自衛隊派遣も「イラク復興支援を進める」としか書かれていない。参院選の公約も郵政民営化は「本年秋ごろを目途に結論」、党の憲法草案も「05年にまとめる」とあいまいな表現が並ぶ。 北城氏は「具体策を公約に書き、国民の支持を受ければ実行のための力が働く」と説く。選挙は国民を味方につけるチャンス。なのに、永田町には何事も「参院選後」というムードが広がる。 16日朝、東京都内のホテル。奥田碩日本経団連会長と笹森清連合会長が社会保障制度の抜本見直しのため、労使代表による協議の場をつくるよう5月下旬に続いて坂口厚労相に求めた。坂口氏は「首相が約束したから必ず設置します。ただ、参院選の後になる」。 首相の自民党総裁の任期切れは06年9月。衆院解散・総選挙に踏み切らなければ2年余りは国政選挙はない。この参院選が首相にとって最後の審判となる可能性が高い。 財務省幹部は言う。「選挙のない今後2年間は落ち着いて改革を進めるゴールデンタイムだ」 □ ■ しかし、本当に実績の強調で十分なのか。いつまでも将来を語らないままでいいのか。その不安が自民党内に芽生える。 「むなしい。後味が悪い」。通常国会閉幕の16日、社会保障に通じたある参院議員はため息をついた。心残りは「年金問題の哲学を語ることができなかった」ことだ。 「小泉さんは『人生いろいろ、会社もいろいろ』などと言う。哲学も何もあったもんじゃない。有権者は年金への不信感を自民党への不信感に直結させないだろうか」 マニフェストを問う最初の機会。そして小泉政権「最後の審判」に民意はどう動くか。7月11日に、その結果が出る。
(朝日新聞2004年6月18日朝刊紙面)
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