2004参院選
 
県選管のポスター取りやめに賛否、さまざまな声

 「どうして岩手の人は、不満があるのに何も言わないの?」。こんなキャッチフレーズの投票啓発ポスターが、県議会の自民クラブの抗議でお蔵入りになったのは、「疑念を抱かれたまま使用すれば、選管への県民の期待が損なわれる」と、県選挙管理委員会が判断したからだった。制作費など計約850万円の税金が無駄になった前代未聞の騒動を巡って、さまざまな声が上がっている。

 問題のキャッチフレーズは、県選管が昨年6月に実施した、統一地方選についての意識調査の結果をもとに考えられた。

 調査では、今の政治に「不満」と答えた人は7割にのぼった。それなのに、投票率低下については「個人の自由なので別にかまわない」といった回答が多かった。

 このため県選管は、参院選では選挙離れが進む若者層に特にアピールしようと、人気タレントのセイン・カミュさんを起用。ポスター2300枚と15秒CMを用意。22日に発表した。

 ところが同日、自民クラブの議員総会で「これでは与党批判だ」との反発が噴出。文書で抗議する事態となった。

 県選管は翌23日、ポスターなどの使用中止を決定。ポスターを作り直すのは、時間的に間に合わない。制作費は、国の補助金を充てているが、国から返還を求められる可能性もある。

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 県選管の判断に、県内各党の意見は割れる。

 自民クの工藤篤代表は「こんなポスターを作る県選管の感覚に、疑問を感じる」と、怒り心頭。公明党の小野寺好県本部代表も「一方的な考えを盛り込むのはよくない。中止して当然だ」。共産党県委員会の菅原則勝書記長も「賛否両論が出るような表現を使ったのは行き過ぎだ」と話す。

 一方、社民党県連合の小原宣良幹事長は「実に的確なフレーズだったのに残念。抗議されるたびにやめるのか」と、対応に首をかしげる。民主党県連の達増拓也代表は「特定政党の横やりで選管の広報が覆されるのは、極めて異常なことだ」と指摘した。

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 岩手大の丸山仁助教授(政治学)は、「いつの世も、今の政治がベストということはあり得ない。それをどう変えていくかが、勝負のはずだ」と指摘。今回の自民クの対応について、「不満を持っている人が多いという現状認識と、その人たちを刺激したくないという余裕のなさの表れだ」とみる。

 「市民オンブズマンいわて」の井上博夫代表は、「公正な表現だと信じるなら、撤回すべきではなかった。特定政党の申し出に配慮した結果だけが残り、かえって中立性が損なわれた。今後、投票啓発活動が萎縮(いしゅく)したり、政党介入に近いことが行われたりするのを危惧(きぐ)する」と、県選管の対応を疑問視している。

 県選管には、25日までに約50本の電話があった。制作費が無駄になったことへの批判が多いが、「いいキャッチフレーズだった。やめる必要はない」という意見や、「ポスターを譲ってほしい」という問い合わせも、あったという。

●県選管書記長「こんな評価、意外」

 県選管の野本祐二書記長に、今回の騒動についての経緯や、ポスターなどの使用を取りやめた理由について聞いた。

 ――自民クラブから申し入れがあったことを、どう受け止めているのか

 意外だった。こんな評価を受けるとは思わなかった。公正中立さを、決して逸脱したものではないと考えている。

 ――ポスターを作った経緯は

 制作会社7社が出した案から選んだ。選管の十数人で投票して、数種類に絞り込んだ。そして再度議論し、投票率を向上させるためには、今回選んだフレーズが一番効果的だと判断した。

 ――では、どうして取りやめたのか

 申し入れに選管が折れたということはない。選管の公正中立さに疑問を持たれてしまった以上、そのポスターを張り出しておくわけにはいかない。選管の中立公平な立場への、県民の信頼を考えて取りやめた。

 ――今回の選管の対応には批判の声もある。今後同様の抗議があった場合はどうするのか

 申し入れを受けた時に考える。こうした申し入れを受けることがないよう、今後も配慮していきたい。

 (06/27)


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