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●タクシー割引で運転手の年収減
小泉政権が進める規制緩和の一環で、タクシー料金が安くなった。会社ごとに初乗り運賃が違ったり、いろいろな割引サービスがあったり、どれに乗ればいいのかわからないほどだ。この業界ではいま、何が起こっているのか。話を聞こうと、タクシー会社に足を運んだ。
南区にあるタクシー会社で、運転手歴20年以上という松田隆司さん(47)が話を聞かせてくれた。松田さんの勤務時間は夕方6時から早朝3時まで。祇園かいわいを流し、飲み屋帰りの客を待つことが多い。
夜の祇園では「12%安い」「初乗り570円」など安さをアピールするタクシーの表示灯がずらりと連なる。不況で客が減ったが、タクシーの数は以前より増えた。数年前に比べると、松田さんの売り上げも1〜2割落ちた。歩合制が基本となる収入も当然減る。
「大阪まで6000円で行くよ」。違法な「ダンピング競争」も増えた。そんな光景を見るたび「行政はこんな状況をちゃんと把握してるんだろうか」と憂うつになる。
■新サービス
タクシーの台数や運賃の制限を大幅に自由化する改正道路運送法が施行されたのが、02年2月。初乗り運賃を値下げする社が続出し、さまざまな割引サービスも登場した。
エムケイ(北区)は03年7月、着物や浴衣を着ていれば運賃が1割引きになる「着物割引」を実施。9月には京都市内の3社が5000円を超えた分の運賃を半額にするサービス「55(ゴーゴー)タクシー」を始めた。今年5月には、洛東タクシー(山科区)が深夜と早朝の運賃割り増しを廃止した。「自由に選べるようになり、お客さんにとってええことやと思う」と松田さんも言う。
■チラシ
だが、危うさも見え隠れする。祇園などを管轄する松原署はこの4月から、客待ちタクシーに事故防止を訴えるチラシを配りはじめた。警察庁のまとめでは、03年にタクシーなど事業用普通乗用車が第1当事者となった交通事故は、約2万7000件。法改正前の01年より4.7%増えた。この間自動車全体では0.4%減っており、タクシー事故の増加が目立つ。「競争が激しくなり、運賃も下がった。稼げない焦りから、つい注意が散漫になるのでは」と署員は指摘する。
厚生労働省の労働統計によると、03年のタクシー運転手の平均年収は約313万円。01年からの2年で約20万円下がった。何人もの運転手が「バックしてぶつけたとか、細かい事故が増えた。何とか稼ごうと無理に長く走るから、みんな疲れている」と口をそろえる。
規制緩和が国民に利益をもたらす一方、弊害が危ぶまれる例は少なくない。雇用をめぐる規制緩和では、労働基準法などの改正で契約社員の雇用期間が延び、業種も拡大。働き方の多様化に対応し、失業者の受け皿をつくる狙いだったが、若年層の雇用の不安定化につながったとの指摘がある。薬局・薬店以外でも薬を買えるようにする医薬品の規制緩和についても、利便性と安全性のバランスをめぐり議論が続く。
「規制緩和そのものがあかんとは思わない。でも、タクシーはお客さんの安全を預かる交通機関。安かろう悪かろうではいかんと思う」と松田さん。安さや便利さの陰で失われる恐れのあるものに、改めて目を向ける必要があるのかもしれない。
〈改正道路運送法〉
規制緩和の一環で、事業者間の競争によるサービスの向上などを目的に、02年2月1日に施行された。タクシー事業については国が需要と供給のバランスに配慮して新規参入を認めていた免許制から、安全性など一定の基準を満たせば参入できる許可制に。運賃はそれまで「同一地域では同一運賃」が原則だったが、ダンピングに該当しないかなどの審査を通れば、値下げができるようになった。
(06/23)
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