2004参院選
 
生活保護 <どうなってるの?社会保障 福井の現場から:5>

 02年1月、今立町の自宅で独り暮らしをしていたNさん(当時52)が餓死しているのが見つかった。

 Nさんは4年前に勤め先の町内の会社を解雇された。足が不自由で、再就職先は見つからず、生活費は母親の年金が頼りだったが、母親は2年後に亡くなった。その後は近所の庭木の手入れをしたり、家財道具を売ったりして生活費にしていた。最後の半年は電気も水道も止められた。

 相談を受けた町議の山崎隆敏さん(55)は役場にNさんの生活保護を訴えた。だが、当時の責任者は「(若いので)年齢的に無理でしょう」などと言って認めなかった。数回の交渉の結果、県に連絡はしてくれたが、本人のところに行って話を聞くなどの調査をすることはなかった。

 山崎さんは「Nさんは生活保護制度を知らなかったので、私のところに相談に来た。役場はNさんの生活が苦しいことを知りながら動かなかった」と悔しそうに話す。

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 生活保護は、私たちのくらしの中で「最後のセーフティーネット」と呼ばれる。02年度の全国の受給者は約124万3000人で、前年度より8.2%増え、1950年の制度発足以来最高の増加率を記録した。

 生活保護率は全国平均が1%に対し、県は0.2%台。だが、ある社会保険労務士は「老後を支える年金の空洞化が進めば、全国平均並みの数字になってもおかしくない」と言う。

 厚生労働省は制度の引き締めを図る。昨年度には、今後3年程度の段階を経て高齢者を対象にした加算制度を廃止することを決めた。国の財政制度等審議会では現在は国4分の3、地方自治体4分の1の負担割合を、国3分の2に引き下げる案が出されている。自治体に保護世帯の自立に向けた取り組みを促す目的だという。

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 生活保護制度にも保護世帯の自立を促す仕組みが欠けている。国が事業費を補助する自立支援専門員も大阪市や横浜市など全国49自治体にしかない。

 嶺北地域で車を使ってたこやき屋をしているSさんが脳卒中で倒れた。一時的に収入が途絶えたため、生活保護を申請すると行政は「車を持っている人には出せない」と認定を拒否した。

 「車を売ったら体が治っても働けない」と訴えても、「規則で決まっている」の一点張り。結局近所の人の好意で車の名義を変更し、ようやく受給が決まった。

 厚労省保護課は「車などの財産をもつことは原則的には認めていない。しかし、資産的な価値がなく、本人の自立のために役に立つというケースなら柔軟に対応するよう自治体を指導しているのだが」と話す。

 同地域で印刷会社を経営するOさんは2年前、数千万円の赤字を抱えて脳卒中で倒れ、半身不随になった。リハビリを続け、松葉づえで歩けるまでに快復した。会社の収益はすべて借金返済に充てているため、生活費は今でも妻のパート収入だけが頼りだ。

 倒れた直後、生活保護を申請し、認められたが、半年で打ち切られた。Oさんは「理由を聞いてもよくわからなかった。一生懸命やっているのに情けなかった」と言う。

 かかりつけの病院のケースワーカーは「自己破産を申請せずに借金返済を続けているので生活に余裕があると判断されたのではないか。本当に困っている時に助け、自立に導こうという気が感じられない」と言う。

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 餓死事件があった今立町では、03年1月に山崎さんら世話人3人を中心に「福祉学習を進める会」が発足した。年に数回、相談会や講演会を開く。

 世話人の福田一九夫さん(46)は「生活保護法は、困窮している人には例外なく手をさしのべなければいけないと定めている。ところが事件後も地域に現状を検証しようという動きが生まれなかったことに危機感を持った」という。

 会の活動を受けて地域にも変化が生まれている。町内の70歳代の女性は福田さんらのアドバイスを受け、生活保護が決まった。苦しい生活を見かねた近所の人が相談会に連れてきたことがきっかけだった。

 役場では、生活困窮者にかかわる機会の多い福祉、税務、水道、教育の担当者が連絡を密にすることなどを決めた。

 山崎さんは「だれもが生活が立ちゆかなくなる可能性を持っている。生活保護法にうたわれている理念を理解する必要がある」と話している。

  =おわり  (06/22)


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